平成27年度 稲城市立病院 病院指標

病院指標は厚生労働省が定めたもので、DPCのデータから全国統一の定義と形式に基づいた指標を作成し、市民の皆さんへ情報公開を進めていきたいという趣旨で今年から始まりました。
どの病院も同じ基準を用いることで、病院ごとの特徴や急性期医療の現状を理解していただくことを目的としています。
項目ごとの定義や算出方法は厚生労働省から細かく決められていて、独自の解釈や項目の取捨選択をすることは認められていません。
  1. 年齢階級別退院患者数
  2. 診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位3位まで)
  3. 初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数
  4. 成人市中肺炎の重症度別患者数等
  5. 脳梗塞のICD10別患者数等
  6. 診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位3位まで)
  7. その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)
【集計対象全項目の共通定義】
 当院を平成27年4月~28年3月に退院した患者さんを対象として集計しています。
集計の対象は医療保険で入院した患者さんのみです。 自費診療や自賠責、労災の患者さんは含まれません。
 また集計期間内に同一人物が複数回の入退院をした場合には延べ数で数えます。
たとえば同じ患者さんが4月に1回、5月に1回というように複数回入院した場合には入院回数で集計していきます。

 本指標では10未満の数値の場合は、-(ハイフン)で表記することとされています。
 各項目のダウンロードデータはテキスト形式(tsvファイル)です。
 ファイルを開く際は、拡張子をtsvからtxtに変更する、プログラムを指定して開く等のご対応をお願いします。
1.年齢階級別退院患者数ファイルをダウンロード
当院を退院された患者さんの年齢を10歳刻みで集計したものです。
年齢区分 0~ 10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~ 80~ 90~
患者数 981 184 290 563 592 512 991 1419 1097 291
当院は地域の中核病院として幅広い年齢層の患者さんを診療しています。
中でも周産期医療に力を入れているため、それに伴い新生児の患者数が多いことが特徴です。
稲城市は高齢化は緩やかなほうとされていますが、ご高齢の患者さんも多くなってきており、昨年は80歳以上の患者さんが2割を占めています。
2.診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位3位まで)ファイルをダウンロード
診療科ごと、DPCごとに延べ患者数を集計し、自院の平均在院日数、全国の平均在院日数、転院率、平均年齢、患者用のパスの有無を示しています。(パスの公開については順次整備する予定です。)
 なお、当院ではこのほかに脳神経外科と眼科が入院診療を行っています。
 しかし昨年度は脳神経外科では医師の減員のため、また眼科では大多数を占める白内障の患者さんの入院診療が(診療報酬の制度上)DPCの対象からは外れていたため、どのDPCも10例以下の症例しかなく、今回は掲載しないという結果になっています。
内科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
040080x099x0xx 肺炎、急性気管支炎、急性細気管支炎(15歳以上) 手術なし 手術・処置等2 なし                                                                       217 12.51 14.34 0.03% 70.77
040081xx99x00x 誤嚥性肺炎 手術なし 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし                                                                                 109 24.84 21.69 0.11% 85.94
110280xx99000x 慢性腎炎症候群・慢性間質性腎炎・慢性腎不全 手術なし 手術・処置等1 なし 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし                                                      64 13.25 13.64 0.11% 68.97
内科では(市中)肺炎、誤嚥性肺炎、慢性腎不全に伴う入院が多くなっています。市中肺炎の平均年齢は70.77歳と高齢で、高血圧や肺気腫などの基礎疾患を有する症例が多い傾向にあります。平均入院期間は12.51日となっており、他の施設に転院することはほとんどありません。誤嚥性肺炎の平均年齢は85.94歳と更に高齢で、脳血管障害や認知症、肺気腫、肺結核後遺症などの基礎疾患を有し、入院期間も24.84日と長期化しています。このため転院率も0.11%と市中肺炎と比較し多くなっております。当院では透析医療にも力を入れているため、慢性腎不全のDPCが上位に上がっています。初めて透析される患者さんのご入院事例が多くみられます。
小児科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
140010x199x00x 妊娠期間短縮、低出産体重に関連する障害(出生時体重2500g以上) 手術なし 手術・処置等2 なし 定義副傷病 なし                                                     363 5.48 6.17 0.28% 0.00
040080x1xxx0xx 肺炎、急性気管支炎、急性細気管支炎(15歳未満) 手術・処置等2 なし                                                                            133 4.20 5.72 0.75% 3.30
150010xxxxx0xx ウイルス性腸炎 手術・処置等2 なし                                                                                             75 2.53 5.50 0.00% 3.91
新生児:在胎34週以上37週未満の早産児、並びに2.5kg未満の低出生体重児の入院治療にあたっております。また新生児黄疸(高ビリルビン血症)の検査、光線療法による治療を行っております。そのほか新生児一過性多呼吸や低血糖症の治療も行っております。
一般小児科:肺炎、気管支炎、細気管支炎などの急性感染症、並びに気管支喘息による呼吸器疾患の治療を行っております。また感染性胃腸炎による脱水の治療も多く当たっております。これらの感染症は昼から夜の区別なく発症・悪化するため、救急外来での入院治療が必要となる頻度が高い疾患であります.
外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
060040xx99x60x 直腸肛門(直腸S状部から肛門)の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等2 6あり 定義副傷病 なし                                                                 84 2.17 4.51 0.00% 66.76
060335xx0200xx 胆嚢水腫、胆嚢炎等 腹腔鏡下胆嚢摘出術等 手術・処置等1 なし 手術・処置等2 なし                                                                     36 5.33 7.84 0.00% 54.14
060035xx99x50x 結腸(虫垂を含む。)の悪性腫瘍 手術なし 手術・処置等2 5あり 定義副傷病 なし                                                                      34 2.03 4.53 0.00% 63.26
外科で最も多いのは大腸癌(結腸癌および直腸癌)で、延べ270例でした。患者さんの経過としては、消化器内科で精査を行った後に外科に入院し、手術を行い、化学療法のために計画的に短期入院を繰り返すというケースが多くみられました。 外科ではDPCごとに集計すると、手術のための入院・手術前後の化学療法のための入院など治療部位、治療内容ごとに多様なDPCに分かれてしまうため、ひとつひとつのDPCの患者数はそれほど多い数にはなりません。今回症例数上位 3つの症例 を合計しても全症例数の2割弱にしかならないのは、そのためです。
2位のDPCは胆石の手術のための入院のことです。当院では通常、身体にダメージの少ない腹腔鏡下での手術を行っています。
整形外科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
160800xx01xxxx 股関節大腿近位骨折 人工骨頭挿入術 肩、股等                                                                                         72 32.14 28.70 15.28% 81.93
160690xx99xx0x 胸椎、腰椎以下骨折損傷(胸・腰髄損傷を含む。) 手術なし 定義副傷病 なし                                                                          50 20.16 21.52 4.00% 80.40
070230xx01xxxx  膝関節症(変形性を含む) 人工関節再置換術等                                                                               32 27.25 27.21 0.00% 73.06
整形外科では大腿骨近位部骨折で入院する患者さんが最も多く、それに伴い大腿骨近位部骨折の手術も多くなっています。次に多いのは、胸椎・腰椎骨折の患者さんで、これは骨粗鬆症のある高齢者の胸腰椎圧迫骨折がほとんどです。大腿骨近位部骨折、胸腰椎圧迫骨折とも高齢者の代表的な外傷であり、入院日数も長くなっています。大腿骨近位部骨折では手術後のリハビリテーションが必要なため、リハビリテーション可能な施設への転院が多くなっています。
3番目に多い患者さんは膝の変形性関節症、腰部脊柱管狭窄症、前腕の骨折が同数でした。変形性関節症は人工関節置換術の手術の患者さんがほとんどで、やはり入院日数は長くなっています。腰部脊柱管狭窄症の患者さんは後方除圧術を受ける患者さんで、高齢者が多く占めています。前腕の骨折は高齢者の橈骨遠位端骨折もあるのですが、若年や壮年にも多い外傷であり、平均年齢は下がっています。上肢の外傷で術後早期に退院可能なため、入院期間はかなり短くなっています。
産婦人科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
120180xx01xxxx 胎児及び胎児付属物の異常 子宮全摘術等                                                                                            82 9.88 9.94 0.00% 34.17
120170xx99x0xx 早産、切迫早産 手術なし 手術・処置等2 なし                                                                                        56 25.20 20.87 12.50% 30.14
120200xx99xxxx 妊娠中の糖尿病 手術なし                                                                                                   56 2.41 6.01 0.00% 33.86
産婦人科の入院のうち症例数の合計が一番多いのは選択的帝王切開(帝王切開で出産することが決まっているもの)のための入院になります。次いで多いのが切迫早産に対する治療で、子宮頸部が短縮したり子宮口が開大し、早産してしまいそうな状態を抑えるための入院です。3番目は妊娠糖尿病の管理教育入院です。妊娠糖尿病等は、妊娠中に初めて発見または発症した、糖尿病には至っていない糖代謝異常です。管理栄養士による食事指導や、血糖値の自己測定などを導入します。内科医師の診察により、必要な場合インスリンの導入も行います。
耳鼻咽喉科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
030240xx99xxxx 扁桃周囲膿瘍、急性扁桃炎、急性咽頭喉頭炎 手術なし                                                                                      54 3.37 5.53 0.00% 37.02
030428xxxxxxxx 突発性難聴                                                                                                          40 5.98 9.60 0.00% 60.95
030400xx99xxxx 前庭機能障害 手術なし                                                                                                    38 3.16 5.31 0.00% 62.50
耳鼻咽喉科に入院する患者さんは、1)耳・鼻・のど・頸部の手術、2)救急疾患の治療、3)悪性腫瘍の治療、に分けられます。
1)手術のために入院される患者さんでは、扁桃手術、鼻中隔手術、副鼻腔手術などが多いです。2)の救急疾患で多いのは、急性ののどの炎症(急性扁桃炎、扁桃周囲炎、急性咽喉頭炎など)、めまい、鼻出血症、突発性難聴、顔面神経麻痺、などです。急性ののどの炎症は、経過によっては気道が狭くなることによる窒息や、腫瘍形成により致命的になるなど、大事に至ることがあります。めまいは、自発眼振があり安静が必要な場合や脳血管障害の可能性を否定できない場合は入院となります。突発性難聴は、発症から1週間以内に治療を開始するのと1週間を過ぎてから開始するのでは、治療効果に大きな差が出ます。めまいを伴う場合や、聴力検査による聴力レベルの低下が重症の場合は、入院して点滴することがあります
皮膚科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
080020xxxxxxxx 帯状疱疹                                                                                                           101 6.92 8.97 0.00% 64.25
080007xx010xxx 皮膚の良性新生物 皮膚、皮下腫瘍摘出術(露出部)等 手術・処置等1 なし                                                                           74 2.05 4.38 0.00% 47.22
080011xx99xxxx 急性膿皮症 手術なし                                                                                                     61 8.57 11.97 0.00% 62.23
帯状疱疹は中枢神経合併症やウイルス血症などの重症化の虞のほか、高齢者の体幹で帯状疱疹後神経痛の合併が起きやすい患者さん、基礎疾患のある患者さんなどが入院加療の適応になります。また、顔面で眼合併症、難聴・顔面神経麻痺、四肢で運動麻痺の合併症など、発症した場合には治療後の生活に大きく制限がくわわる可能性が高いものが適応となります。良性腫瘍は大きさ、部位、個数、基礎疾患、年齢などで入院の適応となることも多く、特に遠方からいらした方の場合は、術後の通院などのことも含めて入院される方がいらっしゃいます。急性膿皮症は創部からの感染による蜂窩織炎などが多く、時に病勢が進行して、緊急切開が必要となるケースもあります。
泌尿器科
DPCコード DPC名称 患者数 平均
在院日数
(自院)
平均
在院日数
(全国)
転院率 平均年齢 患者用パス
11012xxx040x0x 上部尿路疾患 体外衝撃波腎・尿管結石破砕術(一連につき) 手術・処置等1 なし 定義副傷病 なし                                                               33 1.55 2.89 0.00% 51.58
11012xxx020x0x 上部尿路疾患 経尿道的尿路結石除去術等 手術・処置等1 なし 定義副傷病 なし                                                                        29 2.83 5.91 3.45% 61.10
110200xx02xxxx 前立腺肥大症等 経尿道的前立腺手術                                                                                              27 8.56 10.25 0.00% 75.78
泌尿器科では、健康診断や人間ドックでPSA検査を受け、数値が高いため、前立腺癌の疑いで紹介される患者さんが増えています。泌尿器科の入院では、前立腺針生検目的で入院される患者さんが最も多いのですが、DPCの適用にはならないため、本表には載っていません。
次に多い疾患は上部尿路結石症(腎結石、尿管結石)でした。尿道から尿管鏡を尿管に挿入して結石をレーザで破砕する経尿道的尿管結石砕石術(TUL)、衝撃波で結石を破砕する体外衝撃波結石破砕術(ESWL)を実施しています。TULは2泊3日、ESWLは1泊2日の入院治療です。
3番目に多い疾患は前立腺肥大症でした。ループ状の電気メスを装着した内視鏡を尿道内に挿入し、尿道粘膜とともに切除する経尿道的前立腺手術(TURP)を実施しています。
3.初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数ファイルをダウンロード
この表は当院でがんの入院診療を行っている患者さんについて、臓器別、ステージ(進行度)別に集計したものです。
 他の表では患者さんの数は入院回数ごとに(延べ人数で)数えていますが、この表では患者さんの実数を集計しています。
なお、今回はステージ0(上皮内がん)の患者さんについてはどの部位においても掲載しないこととされているため、載せていません。
 また病院指標自体が入院診療のみを対象としているため、外来のみで診断、治療している患者さんについては扱っていません。
このため、実際の患者さんの数に比べると少なめに表示されています。
 また表の病期分類は治療方針を決めるための術前診断に基づくもののため、病理診断結果を含めた最終診断としての病期分類とは異なっています。
病期分類が不明に分類されている症例については、治療前の検査入院に該当する患者さんが多いことを反映しています。
 退院時に評価するため、入院中に検査結果が出ていなかったり、遠隔転移の有無の評価を退院後に外来で行う方針の場合に当該入院中の情報だけでは病期分類ができないことなどが理由として考えられます。
初発 再発 病期分類
基準(※)
版数
Stage I Stage II Stage III Stage IV 不明
胃癌 19 - - - - - 1 7
大腸癌 10 20 - 15 18 20 2 8
乳癌 13 18 - - - - 2 16
肺癌 - - - 18 - - 1 7
肝癌 - - - - - - 2 5
※ 1:UICC TNM分類,2:癌取扱い規約
当院では消化器内科では胃癌、大腸癌、肝癌、外科では胃癌、大腸癌、肝癌、乳癌、呼吸器内科では肺癌の患者さんを診療しています。

胃癌、大腸癌では早期の患者さんの割合が高くなっています。これは、癌ができるだけ早期のうちに内視鏡的治療や腹腔鏡下治療といった比較的患者さんへのダメージの少ない治療を行うことによって、患者さんの負担を減らそうという試みが反映されていると考えます。
乳癌ではステージによって、手術、化学療法、ホルモン療法、放射線療法を組み合わせて、個々の患者さんにあわせた治療を行っています。
肝癌でも肝切除術、血管塞栓術やラジオ波焼灼などを行っていますが、いずれのステージの患者さんも10例以下のため本表には掲載していません。
肺癌では胸部外科がないこともあり、早期の患者さんは近隣の大学病院にお願いするケースが多いため、手術をしない症例を中心に診療しています。
他の癌も含めⅣ期の患者さんにも放射線療法や緩和治療など患者さんの状態に合わせた幅広い治療を実施しています。
4.成人市中肺炎の重症度別患者数等ファイルをダウンロード
 20歳以上の成人市中肺炎の患者さんについて集計し、重症度と年齢、平均在院日数を示したものです。
患者数 平均
在院日数
平均年齢
重症度 0 47 9.00 48.64
重症度 1 60 13.00 75.98
重症度 2 37 13.89 78.05
重症度 3 38 19.00 84.45
重症度 4 21 19.43 83.33
重症度 5 - - -
不明 - - -
【重症度の分類】
市中肺炎ガイドラインによる重症度分類システム(A-DROPシステム)による
①男性≧70歳、女性≧75歳 
②BUN≧21または脱水
③酸素飽和度≦90%
④意識障害(肺炎に由来する)
⑤収縮期血圧が90mmHG以下

軽症 :上記5項目のいずれも満たさない。
中等度:上記5項目の内、1つまたは2つを有する。
重症 :上記5項目の内、3つを有する。
超重症:上記5項目の内、4つ以上を有する。またはショック。
不明 :①~⑤の項目のうち1つでも不明であったもの
重症度別にみると中等症(重症度1、2)が最も多く、全体の約半分を占めています。軽症者(重症度0)の平均年齢が48歳であるのに対し、中等症以上では80歳以上と後期高齢者が中心です。重症度が上がるにつれて在院日数が長くなる傾向があります。中等症以上の肺炎では若年者では喘息など、高齢者では心疾患や癌などの合併症を有することが多く、特に超重症例(重症度4、5)では他の合併疾患のために在院日数のばらつきが大きくなります。
5.脳梗塞のICD10別患者数等ファイルをダウンロード
 本表では脳梗塞の患者さんをICD10(国際疾病分類)別に分類し、平均在院日数、平均年齢、転院率をまとめたものです。
ICD10 傷病名 発症日から 患者数 平均在院日数 平均年齢 転院率
G45$ 一過性脳虚血発作及び関連症候群 - 11 6.09 73.64 0.91%
G46$ 脳血管疾患における脳の血管(性)症候群 - - - - -
I63$ 脳梗塞 3日以内 66 24.70 73.70 13.60%
その他 17 21.60 76.00 0.00%
I65$ 脳実質外動脈の閉塞及び狭窄,脳梗塞に至らなかったもの - - - - -
I66$ 脳動脈の閉塞及び狭窄,脳梗塞に至らなかったもの - - - - -
I675 もやもや病<ウイリス動脈輪閉塞症> - - - - -
I679 脳血管疾患,詳細不明 - - - - -
脳梗塞とは、脳を栄養する動脈の閉塞や狭窄によって脳に十分な血液が供給されず(脳虚血)、脳組織が酸素、または栄養の不足のために壊死、または壊死に近い状態となることをいいます。一般的に、手足が動かなくなる、呂律が悪くなる、言葉が出ないなどの症状を伴います。
脳梗塞のうち一過性脳虚血発作(G45$)とは、これらの症状が一時的に出現したものの、その後、ほとんど元の状態に回復した症例のことです。
脳梗塞を発症したらすぐに医療機関を受診することが多く、当院でも8割以上の人が脳梗塞の症状が出現してから3日以内に受診しています。急性期脳梗塞の換算の平均年齢は74歳で高齢者に多くみられます。点滴や内服による治療に加えてリハビリ訓練もおこなうことが多く、入院期間は平均25日となっています。後遺症が続いている患者さんの一部は、社会復帰を目標としてさらなるリハビリ訓練を続けるために、リハビリ治療を専門としている病院に転院をしています。
I65$は、内頚動脈などの頸部血管に異常が見つかり、症状は現れていないものの脳梗塞に陥る危険性が高い患者さんに対して予防的治療をおこなったものが含まれています。
6.診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位3位まで)ファイルをダウンロード
 本表は入院期間中に実施した中で一番大きな手術のみを、診療科別に集計したものです。
 診療報酬点数表上、手術を分類するためにつけられているKコード、術式の名称、患者数、術前、術後の平均在院日数、転院率、平均年齢、患者用のパスの有無を示しています。(パスの公開については順次整備する予定です。)
 なお、当院ではこのほかに小児科、脳神経外科と眼科が手術を行っています。
しかし小児科での手術はもともとごく少数ですし、昨年度は脳神経外科は医師の減員のため手術件数自体が少なかったため、今回は掲載しないという結果になっています。
内科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K7211 内視鏡的結腸ポリープ切除(2cm未満) 215 0.68 2.62 0.00% 65.63
K610-3 内シャント設置術 23 4.30 12.04 13.04% 75.43
K688 内視鏡的胆道ステント留置術 16 4.56 17.69 25.00% 81.56
内科での手術は消化器内科、腎臓内科、循環器内科で行うものがあります。
内科で最も多かったのは消化器内科で行われている大腸ポリープや大腸腫瘍に対する内視鏡的結腸ポリープ・粘膜切除術です。ポリペクトミー目的の2泊3日入院が典型的な症例です。
次に多いのは腎臓内科で行われている、血液透析が必要な患者さんに対する内シャント設置術です。血液透析は、血液を1度体の外に出して人工腎臓(血液透析器=ダイアライザ)を通して老廃物や過剰な水分を取り除き、また体の中に戻す治療法です。透析に先立って、血液の「送り出し口」「戻り口」である「シャント」をつくるための手術が必要になります。
3番目に多いのは胆道疾患や膵臓疾患に対して行われる内視鏡的胆道ステント留置術です。これは様々な病態で狭窄した胆道にチューブを通して拡張し、胆汁の流れを良くする手術です。この手術は、胆石症に対する内視鏡的胆道結石除去術などの他の手術の前段階として行われることも多く、術後日数が長くなることがあります。
外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K7211 内視鏡的ポリープ切除(2cm未満) 83 0.10 1.40 0.00% 68.96
K6335 鼠径ヘルニア手術 58 0.83 2.74 0.00% 55.50
K672-2 腹腔鏡下胆嚢摘出術 43 1.16 4.56 0.00% 55.65
外科での手術の種類は多岐にわたりますが、最も多いのは大腸ポリープや大腸腫瘍に対する内視鏡的結腸ポリープ・粘膜切除術です。当院では内科でも多く行われている治療ですが、外科では、胃がんや大腸がんなどの手術前、手術後の検査の際に行うことが多いのが特徴です。
次に多いのは鼠径ヘルニア手術です。当院では腹腔鏡下手術も行っています。
3番目に多いのは胆石症などの患者さんに対して行われる腹腔鏡下での胆嚢摘出術です。このほか胃がんや大腸がんなどの消化器がん、乳がんの手術などを行っています。
整形外科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K0461 骨折観血的手術 肩甲骨、上腕、大腿 62 4.66 21.82 16.98% 75.29
K0821 人工関節置換術 肩、股、膝 57 1.37 25.46 0.00% 70.88
K0462 椎弓切除(脊椎固定術、椎弓切除術、椎弓形成術) 50 3.63 14.17 0.00% 75.91
整形外科では大腿骨や上腕骨の骨折観血的手術が最も多くなっています。中でも高齢者の大腿骨近位部骨折の手術が最多で、平均年齢が高くなっています。上腕骨近位部骨折も同様に高齢者に多い外傷の一つです。手術後のリハビリテーションのため、転院率も高くなっています。
 次に多い手術は人工関節置換術で、特に人工膝関節の手術を多く行っています。やはり高齢者に多い疾患なため、平均年齢は高く入院期間も長くなっています。ただリハビリテーションは入院中に終了できることも多く、ほとんど転院せずに自宅へ帰ることが出来ます。
3番目に多い手術は腰部脊柱管狭窄症に対する後方除圧術で、高齢者が多く占めていますが、これも転院の必要のあるケースは少なく、昨年の転院は0でした。
産婦人科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K8982 帝王切開術(選択帝王切開) 76 3.38 9.00 0.00% 34.14
K8981 帝王切開術(緊急帝王切開) 48 2.52 9.33 0.00% 32.40
K8882 子宮附属器腫瘍摘出術(両側) 腹腔鏡によるもの 46 0.83 4.33 0.00% 44.35
産婦人科手術では最も多いのは予定の帝王切開になります。予定帝王切開の場合は前日に入院します。術後は順調な経過の場合9日目に退院します。次に多いのは、緊急で決定・実施された帝王切開でした。3番目は、卵巣のう腫などに対する腹腔鏡下手術です。腹腔鏡は腹部に大きな切開を入れる開腹手術と異なり、小さな穴だけで行う手術なので術後の痛みは軽く、術後回復や社会復帰がたいへん早い、低侵襲な手術です。
眼科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K2821ロ 水晶体再建術(眼内レンズを挿入する場合)(その他) 227 0.00 1.00 1.32% 76.70
K279 硝子体切除術 - - - - -
K2821イ 水晶体再建術(眼内レンズを挿入する場合)(逢着レンズ挿入) - - - - -
白内障に対する手術である水晶体再建術が集計対象手術件数の9割以上を占めます。
また本指標には表示されていませんが、入院せずに外来で白内障手術を行う日帰り手術も試行しておりますが、ご高齢の方には入院手術を勧めています。
また硝子体内注射等も適宜行っております。
耳鼻咽喉科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K3772 口蓋扁桃手術(摘出) 28 1.00 5.39 0.00% 18.11
K340-6 内視鏡下鼻・副鼻腔手術4型(汎副鼻腔手術) 20 1.75 4.05 0.00% 65.75
K309 鼓膜(排液、換気)チューブ挿入術 12 1.00 1.33 0.00% 4.67
耳鼻咽喉科は病気や手術の種類が多いのが特徴です。手術で最も多いのが、扁桃摘出手術です。大人では、習慣性扁桃炎の患者さん(1年間に3~4回以上急性扁桃炎に罹る人)が扁桃摘出手術の対象となります。お子さんでは、睡眠中の呼吸障害(睡眠中に10秒以上呼吸が止まってしまう、など)が対象となり、アデノイドとともに扁桃を摘出します。次に多い手術は、鼻中隔が曲がっていることによる鼻づまりに対する鼻中隔矯正手術です。大人が対象となります。次に多い手術は、慢性副鼻腔炎、副鼻腔真菌症、副鼻腔腫瘍などに対する副鼻腔手術です。20~30年前までとは手術法が全く異なり、最近では内視鏡を使い前鼻孔(鼻の孔)から手術を行なうようになり、患者さんの負担も少なくなりました。
皮膚科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K0051 皮膚、皮下腫瘍摘出術(露出部)(2㎝未満) 27 0.37 1.85 0.00% 41.33
K0072 皮膚悪性腫瘍切除術(単純切除) 26 0.15 4.77 0.00% 72.65
K0052 皮膚腫瘍摘出術(露出)長径2cm以上4cm未満 18 0.22 1.50 0.00% 40.72
皮膚科では入院を必要とする手術は、①術後出血や二次感染の虞が高い患者さん(部位、個数、腫瘍の大きさ、基礎疾患、年齢など)、②黒色腫などの悪性腫瘍で確実な切除と再建手術が必要な患者さんの場合になります。
①には足底の腫瘍、頭皮内の大きさは2㎝以下でも、術後の出血およびそれにともなう二次感染のリスクが高くなることが多く、特に医療圏が当院よりも半径10㎞以上の比較的遠方からの紹介患者さんの場合には、通院も困難なため、入院治療を選択される場合が多いのが実際です。また、夏季は汗をかきやすく創部の治癒が悪いこともあり、入院手術の率が多くなります。脂肪腫など比較的大型で深部に腫瘍があるものも、しばしば全身麻酔を含めた手術になるので、入院の適応になります。
②は悪性黒色腫や有棘細胞癌、基底細胞癌などの癌腫の手術が主なものです。リンパ節郭清なども含め、確実な摘出を行う必要があること、ほとんどの場合に術後の再建が必要となるため、4から10日前後の入院加療を行っています。
泌尿器科
Kコード 名称 患者数 平均
術前日数
平均
術後日数
転院率 平均年齢 患者用パス
K8036イ 膀胱悪性腫瘍手術(経尿道的手術) 電解質溶液利用のもの 47 0.53 6.87 0.00% 73.27
K783-2 経尿道的尿管ステント留置術 39 0.82 3.87 0.00% 72.49
K768 対外衝撃波腎・尿管結石破砕術 33 0.33 1.21 0.00% 51.67
泌尿器科で最も多い手術は経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBt)でした。切除鏡を尿道から膀胱に挿入して腫瘍を切除します。手術後に抗がん剤を膀胱内に注入し、治癒率の向上を補助しています。7日間程度の入院です。
次に多い手術は経尿道的尿管ステント留置術でした。尿管閉塞・狭窄症に対して尿管ステントを留置します。尿管閉塞の原因としては、尿管結石や腫瘍などです。2泊3日の入院治療です。
3番目に多い手術は衝撃波で上部尿路結石症(腎結石、尿管結石)を破砕する体外衝撃波結石破砕術(ESWL)でした。でした。ESWLは1泊2日の入院治療となっています。
7.その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)ファイルをダウンロード
 この表で示す4つのDPCコードは、アップコーディングなど不適切なコーディングとみなされる確率が高いものです。
 この指標はもともとは不適切なコーディングを排除するために設定されたものです。
しかし播種性血管内凝固症候群や敗血症については急性期医療機関はこれらの疾患の治療を担うものですから、当然、これらのコーディングに該当する患者さんも出てきます。
 またこれらの疾患の患者さんは基礎となる疾患を有していることが一般的であり、基礎となる疾患をDPCコードとすべきか、播種性血管内凝固 症候群や敗血症を最終的な請求コードとすべきかは判断に迷う場合がよくあります。
 これらのDPCコードが全くないとすれば急性期病院としては不自然でしょうし、かといって多すぎることも問題です。
 これらのコーディングが適切かどうかは、実際の診療内容をみて病院自身で個別に判断していくことが妥当と思われます。
DPC 傷病名 入院契機 症例数 発生率
130100 播種性血管内凝固症候群 同一 - -
異なる - -
180010 敗血症 同一 12 0.17%
異なる 19 0.27%
180035 その他の真菌感染症 同一 - -
異なる - -
180040 手術・処置等の合併症 同一 29 0.42%
異なる - -
 平成27年度の播種性血管内凝固の症例数は10例以下で、全症例とも他の基礎疾患から播種性血管内凝固に至ったものであり、当院の規模と入院症例数を考慮すると妥当であると考えられます。
 敗血症の入院症例は31例で、このうち入院契機となった傷病名が敗血症であった症例は12例(請求率0.17%)でした。当院では高齢者で、入院以前に糖尿病や慢性腎臓病、悪性腫瘍、コントロール不良な気管支喘息などの基礎疾患があり、免疫が低下している症例が多くみられました。細菌性肺炎や尿路感染症などの基礎疾患を契機に入院し、敗血症に至った症例は19例(請求率0.27%)でした。
 その他の真菌症の症例は10例以下ですが、基礎疾患を有する方が感染を契機に発症したもので、真菌症を合併する素地がある状態だったと考えられます。
 手術・処置等の合併症は入院契機となった傷病名と医療資源を最も投入した病名が同一の症例は29例(請求率0.42%)異なるものは10例以下でした。内訳としては手術後の感染や、透析患者さんが多いことからブラッドアクセス(シャント)やCAPDに関係する症例が主となっています。また、急性の全身性かつ重度なアレルギー反応の一つであるアナフィラキシーなどもこのDPCに入りますが、適正に投与された薬剤に対するアレルギーを治療したものであり、合併症というタイトルとは本来そぐわないと考えます。

 合併症がないことは理想ですが、完全には実現できていないのが現状です。術前には十分な準備を行うとともに、患者様、ご家族にはご納得いただける説明、細心の手術・処置を心がけております。手術や処置にともなう合併症をゼロとすることを目標とし日々切磋してまいります。
更新履歴
2016.9.28
稲城市立病院 病院指標を公開いたしました。